大学編入において「難易度」をどう考えるか?ランキングは作れる?
なんとなく大学編入をしたいと思っているけど、自分のレベルだとどのあたりの大学に行けるのかわからない…高校から受験するのに比べて編入する場合の難易度って同じなのかなぁ?
本記事ではこのような疑問にお答えします。
筆者は、国立高専から九州大学と名古屋大学の編入学試験を受験し、両方合格しました。最終的には九州大学に進学しています。
大学編入において「難易度」をどう考えるか?ランキングは作れる?
結論からいうと、大学編入において「難易度ランキング」を作ることは非常に困難です。筆者独自のランキングを作ってもいいですが、読んでもあまり参考にならないと思い作りませんでした。理由は以下の通りです。
- 学部・学科によって受け入れ人数や倍率が大きく変動する
- 試験科目が大学により異なる
- 一般入試と比べて受験者数が少ない
- 合格基準が不透明な大学が多い
では、もうこの記事終わり?と思われるかもしれませんが、安心してください。代わりに、いくつかの切り口で、今読んでいる方が「大学編入の難易度ってこんな感じなんだ」を自分自身でイメージすることができるような解説を以下に用意しました。
一般入試との比較
一般入試(高校3年生が受験するもの)と比べて、編入試験は全国の高専生や専門学校生などが受験します。そもそも高専自体が全国に57校(2022年現在)しかなく、ライバルは少なそうな印象はありますが、実際どのくらい一般入試との差があるか気になり、調べてみました。
対象人数の比較
ざっくり計算ですが、全国のライバルがどのくらいいるかを比較しました。
項目 | 高専生 | 高校生 |
---|---|---|
1学年の人数 | 約1万人 | 約100万人 |
国立大学進学者数 | 約2000人 | 約10万人 |
国立大学進学率 | 20% | 10% |
高専は、1学年約1万人に対し、その20%の約2000人が国立大学に進学しています。一方、高校生は1学年100万人に対し、国立大学に進学しているのは10%の約10万人です。このことから、国立大学への進学率は高専生は高校生の約2倍であることがわかります。
また、絶対数も高校生の10万人と比べると50分の1の約2000人であるということから、全国にいるライバルも一般入試と比べるとかなり少ないです。(その分、各大学の編入生受け入れ枠は一般入試より大幅に少なくなっています)
試験科目の比較
次に試験科目の比較です。
項目 | 編入試験 | 一般入試(国立理系の場合) |
---|---|---|
共通テスト | 不要 | ・外国語 ・数学IA ・数学IIB ・国語 ・地歴・公民 ・理科1 ・理科2 |
個別試験 | ・数学 ・英語 ・物理(※) ・化学(※) ・専門科目(※) | ・英語 ・数学 ・理科 |
編入試験の大きな特徴として、「一般入試と比べ試験科目が少ない」ということが挙げられます。
一般入試の一大イベントである共通テストは受ける必要がなく、一般科目の「数学・英語・物理・化学」(物理・化学は大学によりないところもあり)と、専門科目(ない大学もある)のみです。
このように比べると試験勉強に費やす労力は編入試験のほうが圧倒的に少ないといえます。つまり、一般入試と比べてお得に国立大学に入ることができる制度と考えられます。
共通テストは昔は「センター試験」と呼ばれていましたが、大学の友人に「センター試験受けたことないなぁ」という話をすると「そんな入学ルートがあったのか」とビックリしていました笑
試験科目が多いほど難易度が高い?「化学」はどう考えるか?
今度は、編入試験の試験科目に着目します。同じ大学でも学部や学科によって試験科目が異なることが多いので、単純にこの大学はこう、というように一括りにした比較は難しいです。
そこで、おそらく受験者が一番多いであろう「工学系学部の電気電子・情報系学科」の筆記試験科目について、旧帝国大学の比較を以下に行いました。(別途、面接や口頭試問、調査書の提出があります)
(⇔横スクロールできます)
大学 | 学部 | 学科 | 推薦有無 | 数学 | 英語 | 物理 | 化学 | 専門科目 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北海道大学 | 工学部 | 情報エレクトロニクス学科 | – | 〇 | 〇(TOEIC) | 〇 | 〇 | – |
東北大学 | 工学部 | 電気情報物理工学科 | – | 〇 | 〇(TOEIC) | 〇 | 〇 | – |
東京大学 | 工学部 | 電子・情報系学科(群) | – | 〇 | 〇 | 〇 | – | – |
名古屋大学 | 工学部 | 電気電子情報工学科 | – | 〇 | 〇(TOEIC) | 〇 | 〇 | 〇 |
京都大学 | 工学部 | 電気電子工学科 | – | 〇 | 〇(TOEFL) | 〇 | 〇 | – |
大阪大学 | 工学部 | 電子情報工学科 | – | 〇 | 〇 | – | – | 〇 |
九州大学 | 工学部 | 電気情報工学科 | 〇 | 〇 | 〇 | – | – | 〇 |
数学、英語は必須科目であることがわかります。英語に関しては、北海道大学、東北大学、名古屋大学がTOEIC試験(またはTOEFLでも可)のスコアシートの提出で代用するスタイルをとっています。
九州大学や大阪大学も今後TOEIC/TOEFLのスコアを採用していく方針のようです。ますます、TOEICの対策は必須となっていくでしょう。
大学編入のTOEIC対策でスタートダッシュを切りたい場合は以下をお読みください。
そのほか着目すべき点として「物理・化学」の有無です。
- 大阪大学工学部電子情報工学科
- 九州大学工学部電気情報工学科
この2つにおいては物理と化学がないため、受験すること自体のハードルは下がります。とはいっても、試験が簡単というわけではもちろんありません。
一方、そのほかの大学では物理や化学が求められますので、それなりに受験のハードルが高いといえます。
物理に関してはある程度勉強している人が多いと思いますが、化学はより曲者ですね。
では、「化学が得意じゃなければ、受験をあきらめたほうがいいのか?」という疑問に対しての答えは「No」です。理由は以下の通りです。(あくまで、電気電子・情報系学生の場合です)
- 電気電子・情報系学生にとって化学は優先順位が一番下
電気電子・情報系の学生の多くは、
全然わからん。とくに有機化学なんて授業で全くやってないけどどうしよ…
な状況です(筆者もそうでした)。そのため、ある程度勉強するかもしれませんが、正直いくら勉強しても範囲が広すぎて対策できる気がしないため、優先順位としては最低になります。
大体の人が苦手意識を持って受験しにきているので、状況としてはほとんど差がつきません。つまり、化学が受験科目にあるからといって、それであきらめてしまうのはもったいないということです。逆に、化学があることによって、ある程度受験人数が絞られる(受験科目の少ない大学の受験者数が増える)という「無言のプレッシャー」的な効果もあるのかもしれません。
また、九州大学に関しては旧帝国大学の中で唯一「推薦枠」があります。こういった要素も難易度ランキングに反映する際に条件を複雑化させるものとなります。
難関大学を目指すなら今すぐ対策を始めよう
一般入試と比べて「お得に」入学できる編入学試験。せっかく高専に入ったのであれば、ぜひその制度を利用し、世間一般でいう「難関大学」を目指すことをおすすめします。
それでは、どんな対策をしていけばいいのか?
まずは、どの大学でもほぼ必須となっている、数学と英語の対策から始めることをおすすめします。
TOEICを受験する場合は、以下の内容を読んでいただければ700点を目標にした時の勉強の進め方がわかります。
冒頭に、筆者は名古屋大学に合格したと書きました。もちろん、その時も化学の試験を受けて、結果的に3割~4割ほどは解けました。有機化学は一切授業では習っていなかったものの、以下の対策で何とか乗り越えられたので、体験談として共有します。何かの参考になれば幸いです。
- ベンゼン環の一覧だけ暗記していった
筆者も化学に関しては試験の1カ月前ぐらいまでノータッチで過ごしていました。しかし、急に「さすがになんかやっとかないとやばいかも」という焦燥感に襲われ、「ヤマを張る」ことにしました。
無機化学はなんとなく授業でやっていたので、無知識な有機化学の分野をどうにかしようと思い、教科書の一番後ろに見開きページで描いてあった「ベンゼン環を含む化合物の一覧」だけひたすら毎日ノートに書いて暗記しました(数学や物理、専門科目の勉強が終わってから1回だけ書くみたいな感じ)。
結果として、偶然ではあるものの入試でベンゼン環に関する問題が出たため、その問題に関してはばっちり回答することができた、ということとなりました。「運も実力のうち」ですね。
まとめ
本記事では、大学編入における難易度について、筆者なりの観点から考えたことを共有しました。以下にまとめます。
- 一般入試との比較:編入試験は一般入試と比べると、試験科目が少なく受験者数も少ないのでお得な制度
- 試験科目の比較:
- 物理・化学がない大学は受験のハードル自体は下がる(だからと言って簡単というわけではない)
- 化学の試験があってもそれで受験をあきらめる必要はない(高専生は化学は優先順位が下がる傾向)
- 推薦の有無:推薦枠のある大学は要チェック
大学選びの基準については、以下の記事でも解説をしていますので、合わせて読んでいただければ幸いです。
また、本ブログでは、大学編入に関する疑問を解決できる記事を多く執筆しています。
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